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わたしのルーマニア雑感

『明日は貴族だ!』みやこうせい著

もし、この本にもっと早くに出会っていたらならば、私のルーマニアとの付き合いももっと年季の入ったものになっていたかもしれない。 みやこうせいさんの『明日は貴族だ!』 がその本である。 対米1ドル=360円と単一レートが定められていた時代、横浜港を出航し、ハバロフスクからシベリア鉄道でユーラシアを横断、ヤシ(Iasi)から始まってゆくルーマニアが主の旅行記である。 みやさんは、ミヨシさんとともに旅をする。 このミヨシさん、当時ウィスキーのCMキャラクターで有名な版画家赤坂三好氏である。 みやさんのコミカルでエスプリの効いた文章に、ミヨシさんの挿絵がよりいっそうこの本を楽しくさせてくれている。 最後まで笑いっぱなしである。 

二人の珍道中は30年以上も前の話なのに、まったく古臭くない。 むしろ新鮮だ。 現代の若者たちの無銭旅行のはしりであるように思える。 仁丹(ジンタン)をもって日・ル友好の交流を深めるあたりは、是非とも見習いたいものだ。 それにしても、写真集もさることながら、一行たりとも読み飛ばせない表現に、みやさんの感性のすごさを改めて感じる。

以前に比べると、随分ルーマニア関係の情報が増えてきた。 テレビ番組にしてもそうである。 しかしながら、この方の存在を抜きにしてルーマニアを語ることは、礼儀知らずともいえる。と言うと過言になるだろうか。 ルーマニアを旅する者にとって、師匠=みやこうせい貴重な参考書=氏の著作物であることは間違いない。

初版本は絶版になっているが、現在、あすなろ社から新装版が出版されている。
(余談ではあるが、その年の大宅壮一賞有力候補に挙げられた本なのだそうだ。)

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